工場のレイアウト計画で失敗しないための7つのポイント

工場を新築するとき、

「必要な設備が入る面積を確保すればよい」

と考えてしまいがちです。

しかし、工場の使いやすさは建物の広さだけでは決まりません。

同じ面積の工場でも、

  • 原材料や製品の移動距離が長い
  • 人とフォークリフトの動線が交差する
  • 柱が生産ラインの邪魔になる
  • 設備を更新したくても搬出入できない
  • 増産したくても設備を追加する場所がない

といった問題があると、完成後の生産性や安全性に大きく影響します。

特に新築工場では、設備レイアウトと建物を別々に計画しないことが重要です。

人・物・車両・設備がどう動くか。そして将来どう変わるか。

この記事では、工場の新築・建替えを検討する際に、建築計画と一緒に考えておきたい7つのポイントを解説します。

1.まず「物の流れ」を整理する

工場レイアウトを考えるとき、最初に整理したいのが物の流れです。

一般的な製造工場であれば、

原材料の搬入 → 保管 → 加工 → 組立 → 検査 → 完成品保管 → 出荷

という流れがあります。

この流れが建物の中で何度も折り返したり、前工程へ戻ったりすると、運搬距離が長くなります。

そのため、まずは

「何が」
「どこからどこへ」
「どの程度の量・頻度で」

移動するのかを整理します。

こうした工程間の物の移動量を整理する方法として、From-Toチャートなどが使われることもあります。

ただし、単純にすべてを最短距離でつなげばよいわけではありません。

工程の途中で一時保管が必要になることもあれば、検査後に前工程へ戻す製品もあります。工程間の搬送量が多い場所ほど近づけるなど、実際の製造方法に合わせて考える必要があります。

新築の場合は、現在の工場のレイアウトをそのまま新しい建物へ移す前に、

「現在の動線に無駄や問題がないか」

を一度整理する良い機会でもあります。

2.人とフォークリフトの動線をできるだけ分ける

次に重要なのが、人と車両の安全な動線です。

工場内では、

  • 作業員
  • フォークリフト
  • 台車
  • AGV・搬送ロボット
  • 原材料
  • 完成品

などが同時に動きます。

特にフォークリフトと歩行者が同じ場所を通るレイアウトでは、交差箇所をできるだけ減らすことが重要です。

例えば、

  • フォークリフト通路を明確にする
  • 歩行者専用通路を設ける
  • 人と車両の出入口を分ける
  • 交差部の見通しを確保する
  • 設備や製品で死角をつくらない

建築計画では、単に「通れればよい」ではなく、設備や車両を実際に使用する状態で必要な幅を確認します。

なお、労働安全衛生規則では、機械間または機械と他の設備との間に設ける通路について、幅80cm以上とすることが定められています。また屋内通路についても、用途に応じた幅を確保することが求められています。

もちろん、80cm確保すれば使いやすい工場になるという意味ではありません。

フォークリフトや台車が通る場所、作業員同士が頻繁に行き来する場所では、実際の運用に応じてさらに十分な幅が必要になります。

法令上必要な寸法と、実際に使いやすい寸法は分けて考えることが重要です。

3.設備と「柱」を別々に決めない

工場レイアウトでは生産設備に目が向きがちですが、建築側で非常に大きな影響を与えるのが柱の位置です。

例えば、

「ここに生産ラインを通したい」

と思っても、そこに柱があればラインを分断してしまいます。

設備自体は置けても、

  • 材料搬送の邪魔になる
  • フォークリフトの旋回を妨げる
  • クレーン作業がしにくい
  • 将来のライン延長ができない

といった問題が生じることもあります。

そのため、

設備レイアウトを決めてから柱を考えるのでも、柱割りを決めてから設備を押し込むのでもなく、両者を並行して検討する

ことが重要です。

柱は少ないほど良いとは限らない

生産ラインの自由度を考えると、大スパンで柱の少ない空間にはメリットがあります。

例えば沢田工務店が採用しているyess建築では、最大60mの無柱スパンに対応しており、大きな無柱空間をつくることができます。

設備配置を頻繁に変更する工場や、大型製品を扱う工場などでは、大スパン化によるメリットが大きくなる場合があります。

一方で、

「柱が少ないほど良い工場」になるわけではありません。

必要以上にスパンを大きくすれば構造上の負担が増え、建築コストとのバランスも考える必要があります。

大切なのは、

生産ラインに支障となる場所には柱を設けず、影響の少ない場所には合理的に柱を配置すること。

設備レイアウトと建築コストの両方を見ながら、最適な柱スパンを決めます。

4.設備の「大きさ」ではなく「使うための空間」を確保する

設備レイアウトで見落とされやすいのが、設備本体以外に必要なスペースです。

設備の周囲には、

  • 操作用スペース
  • 材料を投入するスペース
  • 製品を取り出すスペース
  • メンテナンススペース
  • 扉やカバーを開けるスペース
  • 部品を交換するスペース

などが必要になります。

大型設備の場合には、故障時にモーターや主要部品を取り出すため、フォークリフトやクレーンが近づけることまで考える必要があります。

例えば設備図面の外形寸法が3m×5mだからといって、

3m×5mのスペースを確保すれば設置できる、とは限りません。

さらに見落としたくないのが、設備そのものを建物へ搬入・搬出できるかという問題です。

  • 搬入口の幅・高さ
  • 建物内の通路幅
  • 柱間隔
  • 天井高さ
  • 将来の設備交換ルート

まで考えておかないと、

「設備は置けるが交換できない」

という工場になる可能性があります。

設備メーカーから、できるだけ早い段階で外形寸法だけではなく、メンテナンス範囲や必要ユーティリティまで情報を取得しておくことが重要です。

5.平面だけでなく「床・天井・配管」まで立体的に考える

工場レイアウトは、平面図だけでは決まりません。

設備によっては、

  • 大きな床荷重
  • 独立した設備基礎
  • ピット
  • 排水溝
  • 天井走行クレーン
  • 排気ダクト
  • 給排水配管
  • 電源
  • 圧縮空気

などが必要になります。

クレーンは早い段階で条件を決める

天井走行クレーンを設置する工場では、

  • クレーンの吊り荷重
  • 揚程
  • 走行範囲
  • 設備の高さ
  • 吊り上げる製品の大きさ

などを早期に確認します。

クレーンの条件は建物高さや柱・梁などの構造計画にも関係するため、建物が決まってから追加するより、基本計画の段階から織り込む方が合理的です。

床は「荷重」だけでは決まらない

工場床についても、設備荷重に耐えればよいわけではありません。

フォークリフトが頻繁に走行する場合には摩耗に配慮する必要があります。

また、将来的にAGVなどの自動搬送設備を導入する可能性がある場合には、床の平坦性や段差についても計画段階から意識しておく必要があります。

床は完成後に全面的にやり直すことが難しいため、

将来の設備計画まで考えて仕様を決めたい部分の一つです。

法規によってレイアウトが制約されることもある

工場のレイアウトは、生産効率だけで自由に決められるわけではありません。

建物の規模や構造、用途によっては、

  • 防火区画
  • 避難経路
  • 出入口
  • 消防設備

などの条件がレイアウトに影響します。

危険物を貯蔵・取り扱う場合には、消防法などによる制限も加わります。

そのため、設備レイアウトと建築・消防法規は、基本計画の段階から一緒に確認していく必要があります。

食品工場では衛生動線もレイアウトそのもの

食品工場では、製造工程だけでなく、

更衣
→ 手洗い
→ 衛生管理
→ 作業区域

といった人の動線や、原料と製品、廃棄物などの動線を整理することが重要になります。

2021年6月からは、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が求められています。

そのため食品工場では、衛生管理の方法と建物のレイアウトを切り離して考えることはできません。

6.倉庫・仕掛品・仮置きスペースを軽視しない

生産設備をきれいに並べた図面でも、実際に工場が稼働すると、

「物を置く場所がない」

という問題が起こることがあります。

工場内には、

  • 原材料
  • 仕掛品
  • 完成品
  • 不良品
  • 包装資材
  • 空パレット
  • 金型
  • 工具

など、生産設備以外にもさまざまな物があります。

特に見落とされやすいのが、仕掛品や仮置きスペースです。

現在使用している工場がある場合には、図面を見るだけではなく、実際に現場を見ることが重要です。

例えば通路の端に製品が並んでいたり、設備の間に材料が置かれていたりすることがあります。

一見すると、

「整理すればなくせるスペース」

に見えるかもしれません。

しかし、そこで一度、

「なぜ、ここに置かれているのか」

を確認します。

前工程と後工程の処理能力が違うため一時保管が必要なのかもしれません。

フォークリフトが取りやすい位置だから置かれているのかもしれません。

検査待ちのための場所かもしれません。

現在の工場で自然に生まれている仮置き場所には、図面には描かれていない生産上の機能が隠れていることがあります。

新工場では、それを単純に排除するのではなく、必要な機能であれば最初から計画に組み込みます。

7.「動かせるもの」と「動かしにくいもの」を分けて将来を見る

新しい工場を計画するとき、現在使用している設備がきれいに収まるレイアウトをつくることは重要です。

しかし、工場は長期間使用します。

その間に、

  • 生産量が増える
  • 設備を追加する
  • 製品構成が変わる
  • 生産方法が変わる
  • 自動化が進む
  • AGVなどを導入する

可能性があります。

そこで重要になるのが、

「将来変えやすいもの」と「後から変えにくいもの」を分けて考えることです。

比較的変更しやすいものとしては、移設可能な生産設備や什器などがあります。

一方で、

  • 柱
  • 階段
  • トイレ
  • 機械室
  • 設備基礎
  • ピット
  • 幹線配管
  • 受電設備

などは、一度つくると簡単には動かせません。

設備本体を移動できても、その設備専用の基礎やピット、配管までつくり込んでしまえば、レイアウト変更は難しくなります。

例えば現在4台の設備を将来6台へ増やす可能性があるなら、

どちらの方向へ増設するのか

まで考えておきます。

その先に柱や機械室など、動かしにくいものを配置してしまえば増設できません。

現在のレイアウトを完成させるだけではなく、

将来どこを変える可能性があり、そのために今どこを空けておくべきか。

そこまで考えて建物を計画することが、長く使える工場につながります。

工場レイアウトは「設備を並べる作業」ではない

工場レイアウトというと、設備をどこに置くかという話になりがちです。

しかし新築・建替えの場合には、

製造工程・物流・人の動線・設備・建築・将来計画

を同時に整理する必要があります。

設備だけを先に決めれば建物に無理が生じ、建物だけを先に決めれば生産ラインに無理が生じます。

特に、

柱・設備基礎・ピット・床・クレーン・幹線設備

などは完成後に変更しにくい部分です。

だからこそ、建築設計を始める段階から生産設備と建物を一緒に考えることが重要です。

新工場を計画するなら、まず現在の工場を見る

沢田工務店では、新しい工場を計画するとき、図面や設備リストだけではなく、現在の工場がどのように使われているかを確認することを重視しています。

現場を見ることで、

  • 作業員が実際にどのように動いているか
  • 原材料や製品がどこを通っているか
  • フォークリフトがどこで旋回しているか
  • どこに物が滞留しているか
  • 現在どこに不便を感じているか

など、図面だけでは分からない情報が見えてきます。

新工場は、現在の工場を単純に大きくして再現するものではありません。

現在の工場で生じている課題を解消しながら、将来の変化にも対応できる建物にする。

そのためには、設備計画と建築計画をできるだけ早い段階から一緒に進めることが重要です。

沢田工務店では、工場の新築・建替え・増築について、建物の大きさが決まる前の段階からご相談いただけます。

現在の工場を確認し、生産設備、物の流れ、人と車両の動線、柱スパン、クレーン、将来の設備増設まで含めて、新しい工場のレイアウトを検討します。

「新しい工場を建てたいが、どのくらいの広さが必要か分からない」

「現在の工場の使いにくさを、新工場では解消したい」

「将来の設備増設まで考えた工場にしたい」

という段階でも、お気軽にご相談ください。