倉庫

ミライノ株式会社様(旧社名:三和梱包運輸株式会社)

物流倉庫(市街化調整区域・特定都市河川流域)三つの制約を抱えた土地に、物流倉庫を「無理なく」成立させる

所在地
愛知県清須市
竣工年
2019年
面積
倉庫:1325.74㎡ 事務所:246.80㎡
工期
7ヶ月
事業分野
運送業
構造
倉庫:鉄骨造平屋建て 事務所:鉄骨造2階建て

抱えていた課題

【「自社で倉庫を持つ」という、初めての決断】
長年、賃貸の倉庫を拠点に事業を続けてこられたお客様。契約更新の時期を前に、「これからは自社で物流拠点を構える」という大きな経営判断をされました。
しかし、建物を建てるのは初めての経験。何から決めればよいのか、どの会社に任せれば後悔しないのか ── 不安を抱えながらのスタートでした。そこでお客様が選ばれたのは、複数の設計会社から提案を受けて比較検討する「プロポーザル方式」。慎重に、納得のいくパートナーを見極める進め方でした。
私たちは、その比較検討のテーブルに招かれた一社でした。

【立ちはだかった条件 ── 機能の要求と、土地が抱える難しさ】
お客様が求められた倉庫は、物流の現場を知り尽くした、具体的で妥協のない仕様でした。
・荷物の保管に必要な天井高さの確保
・中型トラックの荷台高さに合わせたプラットフォームの設計
・プラットフォームの上下でフォークリフトが行き来できるスロープ動線
・積み下ろし中にドライバーも積み荷も濡れない、出寸法10mの大庇(ひさし)を、柱のない一体空間で
機能要求だけでも難度の高い計画でしたが、この土地にはさらに三つの制約が重なっていました。
・市街化調整区域 ── 建築には開発行為の許可が必要
・特定都市河川流域 ── 敷地に降った雨水を、そのまま流さず抑制する設備が必須
・埋蔵文化財包蔵地 ── 既存の地盤を掘り返すことができない
通常であれば、これらは見積金額をふくらませ、計画そのものを難しくする要因です。とりわけ「雨水を抑制しなければならないのに、地盤を掘れない」という条件は、一般的な地中貯留の手法が使えないことを意味していました。

SAWADAからの解決策

【私たちの解決 ── 「建物の一部に、二つの役割を持たせる」という発想。】
掘れない土地で、どうやって雨水を貯めるのか。
私たちが選んだのは、専用の貯留設備を新たに付け足すのではなく、この建物がもともと必要としている要素に、雨水を貯める役割を兼ねさせるという設計でした。
ひとつは、プラットフォーム。トラックの荷台高さに合わせて立ち上げる壁を、そのまま調整池の壁として兼用し、屋根に降った雨を受け止めて貯留する仕組みとしました。
もうひとつは、トラック駐車場の後方スペース。ここを表面貯留エリアとして設計しています。普段は、ドライバーが足を濡らすこともない、ごく普通の駐車場。けれども大雨のときだけは、貯留施設として静かに機能する ── そのために、外構の高さ(レベル)を一段ずつ繊細に設定しました。平常時は誰も気づかない、いざというときだけ働く設計です。
この二つを組み合わせることで、既製の貯留設備を別途設置する一般的な手法に比べ、工事費を大幅に圧縮しながら、流域の基準を確実にクリアしました。
そして、これらの制約をすべて満たしたうえで、求められていた10mの無柱大庇も、機能的なプラットフォームとスロープ動線も実現。さらに、採用活動の拠点ともなる事務所には、コストを抑えながらもデザイン性の高い設計をご提案しました。

お客様の声・担当者の視点

プロジェクト担当者より

【結果 ── 二度目のご依頼へ。】
数社の提案を比較されたお客様が私たちを選んでくださった理由は、雨水設計の工夫によるコストの優位性と、事務所と倉庫を一体で考えたデザイン性でした。技術と意匠の両面で、ご納得いただけたものと考えています。
そして何より ── このお客様からは、その後、第二期となる荷捌場の計画も私たちにお任せいただきました。一度任せた相手に、もう一度任せる。これ以上の評価はないと、私たちは受け止めています。