工場を建てられる土地とは?用途地域だけでは分からない工場用地選びの6つのポイント

工場の新築や移転を検討する際、最初の大きな課題となるのが土地選びです。

工場用地を探すときには、土地の価格や面積とともに「この土地に工場を建てられるか」を確認することになります。

しかし、実際の工場用地選びでは、「法律上、工場を建てられる土地」と「工場として使いやすい土地」は同じではありません。

例えば、次のようなケースがあります。

  • 工業地域で建築上の問題はなくても、大型トラックが敷地内で旋回できなければ、物流効率は悪くなる。
  • 土地価格が安くても、大規模な造成や地盤改良が必要になれば、結果的に事業費が高くなる。
  • 現在必要な工場をぎりぎり配置できても、将来増築できなければ、数年後に再び土地の問題に直面する。

そこでこの記事では、工場用地を検討するときに確認しておきたいポイントを、次の6つの視点から解説します。

  • 法規|その工場を建てられる土地か
  • インフラ|工場を動かすための設備を確保できるか
  • 車両動線|大型車両が出入りし、敷地内を移動できるか
  • 高低差・造成|土地価格以外にどのような費用がかかるか
  • 周辺環境|完成後も工場を使い続けられるか
  • 将来増築|事業の成長に対応できるか

1.法規|まず「その工場を建てられる土地か」を確認する

用途地域だけで判断しない

工場用地を検討するとき、最初に確認するのが用途地域です。

工場用地の候補になりやすい用途地域は、主に次の3つです。

このほかの用途地域でも、工場の種類や作業場の規模、使用する機械などによっては、小規模な工場を建築できる場合があります。

反対に、工業系の用途地域であっても、すべての工場が無条件で建築できるわけではありません。

建築基準法では、用途地域ごとに、次のような項目について制限が定められています。

  • 工場の用途
  • 作業場面積
  • 原動機
  • 製造内容

国土交通省も、用途地域ごとの建築物の用途制限を一覧化しています。

そのため、「工業地域だから大丈夫」と土地情報だけを見て判断するのではなく、実際にそこで行う製造内容まで確認する必要があります。

市街化調整区域でも可能性がある

市街化調整区域は、市街化を抑制することを基本とする区域です。そのため、市街化区域と同じように自由に工場を建築することはできません。

ただし、一定の許可基準を満たす場合には、工場を建築できるケースがあります。

愛知県でも、都市計画法第34条第12号に基づき、指定された区域内で一定の業種や規模などの条件を満たす工場・研究所を許可対象とする制度があります。

ただし、この愛知県条例は、県内すべての市にそのまま適用されるわけではありません。

例えば、次の市などは、開発許可事務を各市が行う「事務処理市」であり、県の取扱いとは異なる場合があります。

  • 半田市
  • 東海市
  • 大府市
  • 刈谷市
  • 安城市

したがって、市街化調整区域については、「調整区域だから建てられない」と決めつけず、候補地ごとに許可権者へ確認することが重要です。

大規模な工場では工場立地法にも注意

工場の規模によっては、工場立地法も土地選びに影響します。

製造業などで、次のいずれかに該当する工場は、工場立地法上の「特定工場」に該当する場合があります。

  • 敷地面積9,000㎡以上
  • 建築面積3,000㎡以上

該当する場合には、緑地や環境施設などを考慮した計画が必要になります。

つまり、大規模な工場では、「建物が敷地に入るか」だけではなく、建物以外に必要となる空間も含めて土地の広さを考える必要があります。

2.インフラ|工場を動かすための設備を確保できるか

建物を建てられても、工場を稼働させるためのインフラが確保できなければ事業は成立しません。

特に確認したいのが、次の項目です。

  • 電力
  • 上水
  • 工業用水
  • 排水
  • ガス
  • 通信

必要な電力を確保できるか

製造工場では、大きな電力を必要とする設備を導入することがあります。

土地の前に電線が通っているからといって、必要な電力をそのまま確保できるとは限りません。

設備計画から必要な電力容量を想定し、必要に応じて、次の点を確認します。

  • 高圧受電設備が必要になるか
  • 新たな引込みが必要になるか

受電設備の増強が必要になれば、費用だけではなく、工場稼働までのスケジュールにも影響します。

排水条件も確認する

水を多く使用する工場では、給水だけでなく排水条件も重要です。

主に確認するのは、次の項目です。

  • 公共下水道の有無
  • 排水量
  • 排水の水質
  • 放流先
  • 排水処理設備の必要性

特に食品工場や、製造工程で大量の水を使用する工場では、土地選定の段階で確認しておきたい項目です。

3.車両動線|道路から入れるだけでは十分ではない

工場や倉庫では、原材料の搬入や製品出荷のために、大型車両が頻繁に出入りします。

そのため、土地を検討するときは、次の点を確認します。

  • 前面道路の幅員
  • 大型車両の通行規制
  • 交差点の形状
  • 敷地への進入方向
  • 出入口の位置

さらに見落としやすいのが、敷地に入ってからの車両動線です。

敷地内で大型車両が旋回できるか

敷地図に建物だけを配置すると、十分な広さがあるように見えることがあります。

しかし、実際に大型トラックの軌跡を描いてみると、次のような問題が見つかる場合があります。

  • 敷地内で旋回できない
  • 搬入口へバックで進入できない
  • 荷捌き中の車両を別の車両が避けられない
  • 従業員の車と大型車両が交錯する

工場用地では、建物を最大限大きくすることが必ずしも正解ではありません。

建物を少し小さくしてでも、十分なトラックヤードや旋回スペースを確保した方が、完成後の工場は使いやすくなることがあります。

また、大型車両・乗用車・フォークリフト・歩行者の動線を、できるだけ分離できるかという、安全面からの検討も重要です。

4.高低差・造成|土地価格だけで判断しない

土地を見るときには、面積だけでなく高低差にも注意が必要です。

高低差の大きい土地では、次のような工事などが必要になり、造成費が増える可能性があります。

  • 切土
  • 盛土
  • 擁壁
  • 地盤改良
  • スロープ

しかし、高低差が影響するのは建設費だけではありません。

高低差によって工場の動線が難しくなる

例えば、前面道路の高さと工場床の高さに大きな差がある場合、その間をスロープでつなぐ必要があります。

大型トラックは乗用車と同じような急勾配にはできないため、勾配を緩くすれば、その分長いスロープが必要になります。

その結果、建物自体は配置できても、トラック動線まで考えると、必要な工場面積を確保できないということがあります。

工場用地では平面図だけを見るのではなく、道路と敷地、建物の高さ関係まで考えることが重要です。

安い土地が安い工場になるとは限らない

土地価格が周辺より安くても、次のような条件や必要な工事によって、その差額以上の費用がかかる場合があります。

  • 軟弱地盤
  • 大規模な造成
  • 擁壁
  • 地盤改良
  • 杭基礎

土地を比較するときは、土地価格だけではなく、造成・地盤・建築まで含めた総事業費で考えることが重要です。

5.周辺環境|完成後も工場を使い続けられるか

法令上工場を建てられる土地でも、周辺環境によっては操業しにくい場合があります。

代表的なのが、周辺住宅との関係です。

工業地域でも住宅がある

工業地域では住宅も建築できるため、工場と住宅が混在している場所もあります。

そのような土地では、次の点を考慮する必要があります。

  • 機械の騒音
  • 振動
  • 臭気
  • 夜間照明
  • トラックの出入り

特に、夜間操業を予定している場合には注意が必要です。

愛知県では、工場などの作業騒音について、用途地域と時間帯ごとに規制基準が定められています。

例えば、工業地域では、作業騒音の基準は敷地境界で次のとおりです。

  • 昼間:70dB
  • 朝・夕:65dB
  • 夜間:60dB

また、住居系用途地域に接する一定範囲では、より厳しい基準となります。

工場を建築できることと、周辺環境との関係を保ちながら長期間操業できることは、別の問題です。

郊外ならではの問題もある

一方で、「周囲に住宅がない郊外だから、工場用地として問題ない」とも限りません。

例えば、周囲に田畑、河川、水路、山林などがある土地では、季節によって虫が多く発生する場合があります。

一般的な製造工場では大きな問題にならなくても、食品工場など衛生管理を重視する施設では重要な条件になります。

ほかにも、周辺環境によって、次のような影響を受ける場合があります。

  • 鳥や小動物
  • 土埃
  • 落ち葉
  • 臭気

地図や不動産情報だけでは分からないことも多いため、土地を検討するときには、実際に現地を見ることが重要です。

ハザードも土地選びの条件

もう一つ忘れてはいけないのが、災害リスクです。

工場や倉庫では、建物だけでなく、高額な生産設備や商品、原材料を保管することがあります。

そのため、次の災害リスクについても、候補地ごとに確認しておく必要があります。

  • 洪水
  • 内水氾濫
  • 高潮
  • 津波
  • 液状化

ハザードの存在だけで、土地の良し悪しが決まるわけではありません。

例えば、次のような建築計画によって、リスクを低減できる場合もあります。

  • 床レベルを上げる
  • 重要設備を高い位置に配置する

重要なのは、土地を購入した後ではなく、購入する前にリスクを把握しておくことです。

6.将来増築|「今の建物が入る」だけで判断しない

工場を計画するときには、現在必要な生産能力を基準に、建物規模を決めることが一般的です。

しかし、事業が成長すれば、次のような対応が必要になる可能性があります。

  • 生産ラインを増やす
  • 倉庫を増築する
  • 新しい設備を導入する
  • 従業員用駐車場を増やす

そのため、工場用地を選ぶ段階で、将来の増築も考えておくことをおすすめします。

建蔽率に余裕があっても増築できるとは限らない

例えば、1,500㎡の工場が必要だからといって、「1,500㎡の工場がぎりぎり入る土地」が最適とは限りません。

建蔽率に余裕があっても、次のようなことがあります。

  • 増築できる位置がない
  • 増築するとトラック動線がなくなる
  • 工事車両が入れない
  • 駐車場が不足する
  • 既存工場を止めなければ工事できない

将来的な増築を想定するのであれば、最初の建物をどこに配置するかが重要です。

同じ土地、同じ建物面積でも、最初の配置によって将来の使い方は大きく変わります。

工場用地は「建てられるか」だけで選ばない

工場用地を探す際には、どうしても土地価格・面積・用途地域に目が向きます。

もちろん、この3つは重要です。

しかし実際には、次の6つまで確認して初めて、その土地が工場用地として適しているかを判断できます。

  • 法規
  • インフラ
  • 車両動線
  • 高低差と造成
  • 周辺環境
  • 将来増築

用途地域上は問題がなくても、車両動線やインフラ、造成条件によっては、別の土地を選んだ方が良いことがあります。

逆に、一見難しそうな土地でも、建物の配置や造成計画を工夫することで、有効に活用できる場合があります。

だからこそ工場用地は、土地だけを見るのではなく、「この土地に実際に工場を建てたらどうなるか」まで考えて選ぶことが重要です。

土地を購入する前に、建物を配置してみる

工場用地を選ぶときに有効なのが、土地を購入する前に、簡単な配置計画を行うことです。

候補地に次の建物・設備・スペースを配置し、大型車両の軌跡や高低差まで確認します。

  • 工場・倉庫
  • トラックヤード
  • 搬入口
  • 従業員・来客用駐車場
  • キュービクルなどの設備
  • 将来増築スペース

これによって、「土地を買った後に、希望していた工場が成立しないことが分かった」というリスクを減らすことができます。

なお、実際の土地では、用途地域以外にも、次の確認が必要になる場合があります。

  • 開発許可
  • 農地転用
  • 土壌汚染
  • 埋蔵文化財
  • 地区計画

すべての土地で同じ確認が必要なわけではありませんが、候補地ごとに必要な調査を整理しておくことが大切です。

愛知県で工場・倉庫用地をお探しの方へ

沢田工務店では、工場・倉庫の設計・施工だけでなく、グループの不動産部門と連携し、土地探しの段階からご相談いただけます。

土地を紹介するだけではなく、候補地に建物を配置し、次のような建築側の視点からも土地を検討します。

  • 希望する工場を建築できるか
  • 大型車両が安全に出入りできるか
  • 高低差や造成に問題がないか
  • 必要なインフラを確保できるか
  • 将来増築できるか

次のような段階でも、お気軽にご相談ください。

  • 「候補地があるが、希望する工場が建つか確認したい」
  • 「土地を購入する前に、一度建物を配置してみたい」
  • 「工場に向いた土地から探したい」

土地探しと建築計画を同時に進めることで、完成後まで使いやすい工場づくりをお手伝いします。