環境に配慮した企業の在り方 アスベストとPCB
環境対策はすでに企業のテーマとして浸透しつつありますが、近年様々なメディアで環境対策・環境問題が取り上げられ、世の中の関心がより高まっています。
CRE(企業不動産)の価値を高める為にも環境対策は重要なテーマです。
環境に配慮する取り組みは近隣住民や取引先に自社の事業内容を理解していただき、地場に根差した経営をし続ける為に必要なことであります。
これらは大企業だからできて、中小企業では難しいというものではありません。
企業として欠かしてはいけないことなのです。
今回は環境対策の中でも身近な存在であるアスベスト、PCBについてご紹介していきます。
これらのワードを聞いて「有害な物質」というイメージはあるかと思いますが、具体的にどのようなもので、どんな建物に存在し、どのように処理をすれば良いのかをご存知でしょうか?
皆様が今後、解体や増築等を所有されている建物でご検討の際、アスベスト、PCBに対する理解が不足していると思わぬ落とし穴に落ちてしまう可能性もあります。
ご存じの方も再確認していただけると幸いです。
アスベストについて
アスベスト(石綿)とは
アスベストという言葉を耳にする機会はあると思いますが、実際にご覧になったことはありますでしょうか。
アスベストとは石綿のことで天然に産する繊維状けい酸鉱物繊維のことです。
アスベストは熱に強く(耐熱性があり)、摩擦に強い、酸やアルカリに強いという特徴があります。
その為、昭和30年頃から鉄骨構造ビルなどの建物の保温断熱の目的でアスベストを吹き付ける作業が行われてきましたが法令により昭和50年に原則使用禁止となりました。
アスベストはなぜ危険なのか
使用が禁止となったアスベストですが、なぜ危険なのかお伝えします。
アスベストは飛散しそれを人が吸い込む事により人体へ影響を与えます。
アスベストの繊維は、15年~40年の潜伏期間を経て、石綿(アスベスト)肺、肺がん、悪性中皮腫の原因になると言われ肺がんを起こす可能性があると報告されております。また、目に見えない細かい繊維の為、知らないうちに吸い込んでしまう可能性があります。
写真はイメージです
アスベストの飛散を防止する為には
建物の老朽化に伴い、吹付石綿等が使用されている建築物を解体、改築する場合には、アスベストが飛散しないように措置を施して解体等を行わないといけません。
具体的には解体作業を行う前に飛散しないようにプラスチックシート等を使って他の場所と隔離してアスベストを取り除く、作業の安全性の為に作業場にはエアフィルタ等を設置して排気を充分に行うなどの対策が必要となります。
アスベストはどこに使われているか
アスベストは耐火被覆材として柱・梁に吸音・断熱材として、機械室の天井や壁に使用されております。具体的には耐火壁、天井、軒天、間仕切り壁等に使用されておりました。
アスベストの確認方法
一定規模以上等の建築物について石綿(アスベスト)含有建材の有無にかかわらず大気汚染防止法により調査結果の都道府県等への報告の義務付けられ、解体工事等の前に事前調査が必要になります。
アスベストの確認方法には設計図書で確認し、実際に現地で目視確認をする必要があります。
また、合わせて専門的な分析機関に依頼して分析調査による判定を行う事も望ましいとされています。
この工程は弊社で確認する場合の工程になります。
- 増築や改築を検討している
- アスベストの有無を確認せず現在も事務所・工場などで建物を使用している
- 解体を検討している
以上に該当する方はアスベストの確認が必要です。
以上がアスベストについての説明です。
人体に影響を及ぼす有害物質として環境への配慮も大切ですが、従業員の安全を守る為にも把握しておくべき必要がある事です。
PCBについて
PCBとは
PCBとはPoly Chlorinated Biphenyl(ポリ塩化ビフェニル)の略称で、人工的に作られた、 主に油状の化学物質です。PCBの特徴として、水に溶けにくく、沸点が高い、熱で分解しにくい、不燃性、電気絶縁性が高い等の特徴があります。化学的にも安定な性質を有することから、電気機器の絶縁油、熱交換器の熱媒体、ノンカーボン紙など様々な用途で利用されていましたが、現在は製造・輸入ともに禁止されています。
PCBの健康被害
脂肪に溶けやすいという性質から、慢性的な摂取により体内に徐々に蓄積し、様々な症状を引き起こすことが報告されています。PCBが大きく取りあげられる契機となった事件として、1968年(昭和43年)に食用油の製造過程において熱媒体として使用されたPCBが混入し、健康被害を発生させたカネミ油症事件があります。カネミ油症は、昭和43年10月に、西日本を中心に、広域にわたって発生した、ライスオイル(米ぬか油)による食中毒事件です。症状は、吹出物、色素沈着、目やになどの皮膚症状のほか、全身倦怠感、しびれ感、食欲不振など多様です。
写真はイメージです
PCB使用の機器
PCBが使用された代表的な電気機器等には、変圧器やコンデンサー、安定器があります。
PCBが含まれている変圧器やコンデンサーは、古い工場やビル等で使用されており、安定器は古い工場や学校等の蛍光灯等に使用されていました。なお、工場や学校などの施設に使用されていた蛍光灯が対象で、一般家庭の蛍光灯にPCBを使用したものはありません。
PCBの経緯
PCBはその有用性から広範囲に使用されるも、その毒性が明らかになり1972年(昭和47年)に製造が中止になりました。それから約30年間に渡り民間主導で処理施設の立地が試みられましたが、地元住民の理解が得られず立地には至りませんでした。
保管の長期化により、紛失や漏洩による環境汚染の進行が懸念されたことから、それらの確実かつ適正な処理を推進するため、平成13年6月22日に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(PCB 特措法)が公布され、同年7月15日から施行されました。
PCBの有無を確認したほうがよい例
- 昭和47年以前に建てられた工場をお持ちの方
- 天井クレーンやマシニング事業の方
- 古い変圧器やコンデンサーを使用されている方
PCBの処分期間
PCBの処分には期間が設けられています。
高濃度PCBの場合、中部エリアでは変圧器・コンデンサーは令和4年3月31日まで処分する事が出来、それ以降に関しては処分する事が不可能となります。
また、低濃度PCBの処分期限は令和9年3月31日までです。
期間の延長は出来ず、期間間際には混雑が予想されます、予め余裕をもって処理する必要があります。
まとめ
現在、CRE(企業不動産価値)の観点において環境に配慮した企業が注目されています。
沢田工務店で解体や増築工事を施工する際にもアスベスト・PCBの調査はかかせません。
これらの対策は環境配慮型企業として重要な企業価値の向上に繋がります。
そこで働く従業員からの支持や地域の方からの理解を得る事により地場で根強く定着する企業として大きな信頼を獲得する事が出来ると感じます。